SES・ITエンジニア SES業界ガイド・特集
スキルシートを右から左に流すだけの営業は、LLMに置き換わる
SESの営業力とは商流の浅さ・単価交渉・マッチング精度で決まる。だが生成AIは案件とスキルシートの突合という中核作業を自動化しつつある。淘汰される営業と残る営業の分岐、エンジニアが会社を見分ける方法を当事者が書く。
これは自分の商売を切る話である。私はSES仲介の営業の側の人間だ。その立場で断言する。スキルシートを右から左に流すだけの営業は、LLMに置き換わる。もう始まっている。
SESの「営業力」の正体
エンジニアから見えにくいが、SES営業の価値は三つに分解できる。
- 商流の浅さ。エンド企業や元請けに直接の取引口座を持っているか。何次請けの位置で商売しているかが、エンジニアの単価の天井を決める。
- 単価交渉力。同じエンジニアでも、交渉次第で単価は動く。市場相場を把握し、根拠を積んで交渉できるか。
- マッチング精度。案件の要求とエンジニアのスキル・志向を正しく突き合わせられるか。ミスマッチは早期終了と待機を生む。
LLMが自動化するのは、どの部分か
このうち三つ目——突合の作業は、LLMの得意領域そのものだ。案件票の要求スキルとスキルシートの経歴を読み比べ、候補を挙げ、提案文の下書きまで作る。かつて人間が一日かけていた一次スクリーニングは、機械が先にやる時代に入った。月に数百、数千件の案件情報が流れる仲介の現場では、人力の突合はすでに競争力ではない。
つまり、突合「だけ」をやってきた営業の価値は消える。あなたの会社の営業が案件票を機械的に転送してくるだけなら、その会社の営業力は既に空洞である可能性が高い。
それでも残る営業の価値
一方で、LLMには置き換わらない仕事が残る。商流の開拓——エンド直・元請直の取引口座を新規に開く仕事は、信頼の構築であってテキスト処理ではない。単価交渉——相場データを根拠に顧客と向き合う仕事。トラブル時の調整——現場の炎上や契約変更の局面で間に立つ仕事。そしてキャリアの壁打ち相手。エンジニアの3年後を一緒に設計できる営業は、ツールが何になっても残る。
エンジニアが会社を見分ける方法
結論として、所属会社・転職先の営業力はこう測ればいい。第一に「何次請けの案件が多いですか」と聞く。即答できない、または深い商流ばかりなら、開拓力がない。第二に、営業がAIツールをどう使っているかを聞く。突合を機械に任せ、人間は交渉と開拓に時間を使っている会社は強い。全部人力の会社は、営業の時間が事務作業に溶けている。
営業が淘汰される時代は、エンジニアにとっては良い時代である。空洞な仲介が減り、単価の透明性が上がる。構造の変化は、知っている者の味方をする。
FAQ よくある質問
営業力が強いSES企業はどう見分けられますか?
「何次請けの案件が多いか」「エンド直・元請直の取引はあるか」を質問するのが最短です。あわせて単価交渉の実例や、営業のAIツール活用状況を聞くと、開拓・交渉に時間を使える体制かが分かります。
マッチングがAI化されたら、SES仲介そのものが不要になりませんか?
突合作業は自動化されますが、取引口座の開拓・単価交渉・契約とトラブルの調整・キャリア設計の支援といった信頼ベースの機能は残ります。仲介の価値が「作業」から「交渉と開拓」に移る、というのが正確です。