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還元率競争は終わりに向かう——次に効くのは「単価を上げる会社」だ
高還元SESの還元率競争は消耗戦の段階に入り、競争から距離を置く経営判断を公言する会社も現れた。還元率という指標の限界と、生成AIを含む「単価アップ施策」が次の競争軸になる構造を、仲介の現役当事者が解説する。
還元率競争は、終わりに向かっている。仲介の現場からは、そう見える。
エンジニアへの還元率を70%、75%、80%と競い上げてきた高還元SESの一群。その競争が数字の上限に近づいた。100%の還元はあり得ない。営業も労務も教育も、会社を回す機能には原資が要るからだ。80%前後で頭打ちになれば各社は横並びになり、差別化は消える。実際、還元率競争そのものと距離を置く経営判断を公言する会社まで現れている。競争の局面が変わったのだ。
還元率という指標の構造的な欠陥
そもそも還元率は、単独では信用できない指標である。理由は分母だ。
- 単価から社会保険料の会社負担分を引いた後の金額を分母にする会社がある。
- 交通費・教育費・営業経費の扱いも会社ごとに違う。
- 結果、見かけの80%が実質の60%相当ということが普通に起こる。
業界の従来相場が50〜60%、高還元を名乗る会社で70〜80%。この数字を比較する前に、計算式を比較しなければ意味がない。数字は嘘をつかないが、分母は嘘をつける。
同じ還元率なら、単価が高い方が勝つ
ここで単純な算数を置く。単価70万円で還元率80%なら、給与原資は月56万円。単価90万円で還元率70%なら63万円。還元率で10ポイント負けていても、単価で20万円勝てば給与は上回る。
つまり還元率競争の次に来るのは、単価競争である。エンジニアの単価を上げられる会社——上流工程へ押し上げる教育、浅い商流の案件を取ってくる営業力、単価交渉の実行力を持つ会社が、還元率の看板を掲げるだけの会社を追い抜いていく。
単価を上げる装置としての生成AI
そして単価を上げる装置として、生成AIが効き始めている。AIを実務で使いこなすエンジニアの単価は、そうでないエンジニアに対して差がつき始めた。これは個人のスキルの話にとどまらない。AI研修に投資できるか、AI活用を前提としたモダンな案件を開拓できるか、という会社側の体力の話でもある。
読者への結論。「還元率が高い会社」を探すのをやめ、「所属エンジニアの単価が上がり続けている会社」を探せ。面談で聞くべきは還元率の数字ではなく、単価を上げるために会社が何に投資しているか、である。答えに詰まる会社は、看板だけだ。
FAQ よくある質問
還元率は何%あれば良心的ですか?
数字単独では判断できません。分母に社会保険料や経費を含むかで実質が大きく変わるためです。計算式を開示しているか、待機時や超過精算の扱いまで説明できるかを併せて確認してください。
還元率と単価、どちらを重視すべきですか?
給与は単価×還元率で決まるため両方が変数ですが、還元率は上限(80%前後)に近づいており、伸びしろは単価側にあります。単価を上げる仕組み(教育・商流・AI投資)を持つ会社を選ぶ方が中長期では有利です。