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「SESやめとけ」は半分正しい。仲介業者が明かす企業の見分け方

「SESやめとけ」は半分正しく半分間違いだ。SES仲介の現役事業者が、多重下請け・経歴詐称・案件ガチャの実態と、還元率・商流・評価制度で「辞めるべきSES/残ってよいSES」を見分けるチェックリストを解説する。

まず数字を見てほしい

レバテックフリーランスの公開データによれば、フリーランスのシステムエンジニアの平均月額単価は71万円、プログラマーで68万円、インフラエンジニアで67万円である。単純に12倍すれば年800万円を超える水準だ。一方、同じ現場で同じ画面に向かうSES企業所属のエンジニアの年収が、その半分に届かない光景を私は何度も見てきた。差額はどこへ消えたのか。答えは商流の途中にある。

先に立場を明かしておく。本サイト運営者はSES仲介の現役事業者である。つまり、その「消えた差額」の一部で飯を食っている側の人間だ。だからこそ内側から書けることがある。「SESやめとけ」という検索ワードへの私の答えはこうだ。半分正しく、半分間違いである。正しいのは、辞めるべきSES企業が実在するからだ。間違いなのは、残ってよいSES企業もまた実在し、両者は面談の場で見分けがつくからである。

「やめとけ」が半分正しい理由 — 構造の問題は実在する

多重下請けと中抜きは都市伝説ではない

公正取引委員会は2022年、18年ぶりとなるソフトウェア業の大規模実態調査の結果を公表した。資本金3億円以下の約2万1000社を対象にした調査である。そこで浮かび上がったのは、多重下請け構造の中での買いたたき、仕様変更への無償対応の要求、そして商流の途中に座っているだけの「中抜き」事業者の存在だった。行政の公式調査が構造問題を認定したという事実は重い。

エンド企業が100万円を払っても、元請け、二次請け、三次請けと降りるたびにマージンが差し引かれる。四次請け、五次請けまで沈めば、現場のエンジニアに紐づく単価は原資の半分近くまで痩せる。あなたの給与が上がらない最大の理由は、あなたの能力ではなく、あなたの会社が商流のどこに立っているかである場合が多い。

経歴詐称という「慣行」

スキルシートを盛る。独学のJavaを「実務3年」と書く。行ったこともない現場を経歴に並べる。悪質な企業は新人にこう告げる。「この業界では当たり前だ」と。当たり前ではない。発覚すれば所属企業は取引停止に至り、損害賠償や詐欺と評価される法的リスクはエンジニア本人にも及び得る。仲介の立場から言うが、盛られたシートは面談の質問三つで大抵割れる。割れたとき、信用を失うのは書かされた側だ。理不尽だが、それが現実である。

案件ガチャ — 配属は運という真実

SESの配属は本人の希望より営業の都合で決まりやすい。開発を志望してテスト工程やキッティングに送られ、スキルの積み上がらない年月が過ぎる。これを業界では「案件ガチャ」と呼ぶ。ガチャという言葉の軽さに、キャリアを運任せにされる者の諦めが滲んでいる。

「やめとけ」が半分間違いである理由

SES契約そのものは合法かつ合理的な仕組みだ

誤解が多いので明記する。SESは準委任契約であり、契約形態そのものに違法性はない。要は指揮命令権の所在である。準委任では指揮命令権は所属するSES企業の側に残る。客先が直接エンジニアに指揮命令を行えば、それは偽装請負であり、労働者派遣法59条により1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になり得る。つまり問題は制度ではなく、制度を守らない運用だ。制度と運用を混同して「SESは全部黒」と断じるのは、議論として雑である。

未経験者にとっての現実的な入口である

実務経験ゼロの人間を自社開発企業がいきなり雇う例は少ない。SESは正社員として社会保険と待機時の給与を保証しながら、研修と現場をセットで提供し、実務経験を積ませる装置として機能してきた。2〜3年の実務を積んだエンジニアが、より商流の浅い企業やフリーランスへ移っていく。この足場としての価値は、否定しがたくある。

法規制は確実に締まりつつある

2024年11月にはフリーランス・事業者間取引適正化等法、いわゆるフリーランス新法が施行された。発注側には業務内容・報酬額・支払期日の明示が義務づけられ、報酬は受領から60日以内の支払いが原則となった。下請けと業務委託の暗がりに、少しずつ光が差し込んでいる。ブラックな運用の生存余地は、確実に狭まっている。

数字で見分ける — 還元率の相場と計算式の罠

SES企業の還元率、すなわち単価のうちエンジニアに支払われる割合は、60〜70%が業界の平均帯とされる。厚生労働省が派遣事業者に義務づけるマージン率公開の情報を整理した業界メディアでは、ITエンジニア派遣の還元率はおよそ61%という水準が示されている。70%を超えれば「高還元SES」を名乗る資格がある、というのが相場観だ。

ただし、ここに罠がある。還元率の計算式は法定されていない。社会保険料の会社負担分を「還元」に算入して数字を膨らませる企業。営業経費を控除してから計算する企業。待機時の給与保証を外すことで高い数字を実現する企業。同じ「75%」でも中身はまるで違う。数字を見るな、計算式を見よ。これが仲介業者としての助言である。

辞めるべきSESと残ってよいSES — 比較表

チェック項目辞めるべきSESの兆候残ってよいSESの条件
単価の開示聞いてもはぐらかす・秘匿を貫く本人単価と還元率の計算式を開示
商流の深さ三次請け以下が常態化エンド直・元請け直の案件が過半
スキルシート会社が本人確認なしに加筆・改変提出前に必ず本人が最終確認
待機期間待機は無給・自己都合退職を促す待機中も給与を全額保証
評価制度単価が上がっても給与が動かない単価連動の昇給ルールが明文化
営業の関与契約後は現場に来ない・面談なし定期面談があり契約条件を交渉する

六項目のうち左列に三つ以上該当するなら、それは「やめとけ」と言われる側のSESである。逆に右列が並ぶ企業であれば、SESという業態そのものを恐れる理由は乏しい。

面談で放つべき五つの質問

  • 「私の単価と、還元率の計算式を教えてください」 — 即答できない会社に透明性はない。
  • 「商流は何次ですか。エンド直の比率は」 — 商流の深さは単価と労働環境の上限を決める。
  • 「スキルシートは提出前に本人が確認できますか」 — 経歴詐称体質かどうかの踏み絵になる。
  • 「待機期間中の給与保証はどうなっていますか」 — 高還元を名乗る企業ほど、ここで馬脚を露す。
  • 「単価が上がったとき、給与はいつ、いくら上がりますか」 — 評価制度の実在を確かめる最短の質問だ。

五つとも、答えられて当然の質問である。答えをためらう空気が流れたら、その沈黙こそが答えだ。

「ホワイトです」の作り方 — 採用側はチェック項目をどう化粧するか

ここまでチェックリストを並べておいて、水を差すことを言う。チェックリストは、ネットに出回った瞬間から対策される。机の向こう側に座る人間として断言するが、採用する側・営業する側は「ホワイトSESの見分け方」の類いを読者より先に読み込み、面談の模範解答を用意している。攻める側の視点を欠いたチェックリストは、半分しか機能しない。

化粧の類型はおおむね三つある。第一に、還元率。計算式込みの説明を口頭でよどみなく返せるよう、営業トークとして磨き込む。その場で数字も式も検証できないことを、話す側は知っている。第二に、帰社日や研修。「制度として存在する」体裁だけを整える。年に数回の帰社日、契約しただけのeラーニング。稼働しているかは別の話だ。第三に、案件ガチャへの不安には「希望を最大限尊重します」という反証不能の言葉を充てる。嘘ではない。ただし、何一つ約束していない。

では読者はどう受けて立つか。口頭の説明を信じるのをやめ、恒常的な開示を見ればよい。面談の受け答えは一晩で作れるが、公式サイトや書面で開示し続けている還元率・単価のルールは、偽れば会社が信用と法的リスクを負い続ける。重い嘘は、つきにくい。もう一つ、「直近に配属された人たちの案件の内訳」を聞くこと。理念は化粧できるが、実績の分布は化粧しにくい。開発が何割、テストが何割と即答できない会社の「希望尊重」は、まだ言葉の段階にある。

要するに、リハーサルで答えられる問いを捨て、記録と実績でしか答えられない問いへ移れ。それだけで、化粧の大半は落ちる。

結論 — 辞める前に、見るべきものを見よ

「SESやめとけ」は、業態への呪詛としては間違いであり、特定の企業群への警告としては正しい。レバテックフリーランスの公開データが示す通り、市場はエンジニアに月額70万円前後の値札をつけている。その値札とあなたの給与明細の差を説明できない会社なら、去ってよい。説明でき、還元し、キャリアに投資する会社なら、SESという看板だけを理由に去る必要はない。

最後に釘を刺しておく。転職も独立も、決めるのはあなた自身である。本稿は判断材料の提示であって、答えの代行ではない。それでも一人で整理がつかないときは、案件やキャリアの無料相談は本サイトの相談窓口へ。仲介業者の内側から、見えるものを率直に話す。

FAQ

SESはやめとけと言われるのはなぜですか?

多重下請けによる中抜き、経歴詐称(スキルシートの改変)、配属先を選べない「案件ガチャ」が三大理由である。公正取引委員会の2022年実態調査でも買いたたきや中抜き事業者の存在が指摘された。ただしこれらは業態そのものではなく企業ごとの運用の問題であり、単価を開示し商流の浅い企業を選べば回避できる部分が大きい。

SESの還元率は何%あれば優良と言えますか?

業界平均は60〜70%とされ、70%を超えると高還元SESと呼ばれる水準になる。ただし還元率の計算式は法定されておらず、社会保険料の会社負担分を含めて数字を膨らませる企業もある。数字の高低より「計算式を開示しているか」「待機時の給与保証があるか」を確認するほうが本質的である。

スキルシートの経歴を盛るよう会社に指示されたらどうすればいいですか?

応じるべきではない。経歴詐称は発覚すれば所属企業の取引停止につながり、損害賠償や詐欺と評価される法的リスクはエンジニア本人にも及び得る。指示された事実はメール等の記録に残し、提出前の本人確認を求めたうえで、応じない企業なら転職を含めて検討することを勧める。

SESからフリーランスになれば単価は上がりますか?

レバテックフリーランスの公開データではシステムエンジニアの平均月額単価は71万円で、会社員時代の年収を上回る例は多い。ただし待機時の給与保証や社会保険の会社負担、営業代行が失われるため、額面の単純比較はできない。実務経験と商流の理解を積んでから判断すべきで、独立するかどうかは読者自身の選択である。

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