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SESの商流とは?エンド直・元請け・2次請けの見分け方と単価への影響
SESの商流(エンド直・元請け・2次請け)の構造を現役のSES仲介事業者が図解。多重下請けが単価に与える影響、面談で商流を確認する質問例、商流改善の現実的な手段まで、フリーランス新法や2026年施行の取適法も踏まえて解説する。
まず数字を見てほしい。レバテックフリーランスが公開する職種別データ(執筆時点)によれば、フリーランスのシステムエンジニアの平均月単価はおよそ72万円、プロジェクトマネージャーなら88万円前後、ITコンサルタントになると100万円を超える。一方で、SES企業に所属するエンジニアの月給が、これらの数字の半分に届かないことは珍しくない。差額はどこへ消えたのか。答えの大半は「商流」にある。
本サイト運営者はSES仲介の現役事業者である。つまり差額が生まれる側、その内側で日々仕事をしている人間だ。だからこそ書ける範囲で、商流の構造と、それがあなたの単価をどう決めているのかを、できるだけ正確に記しておきたい。
商流とは何か — 発注があなたに届くまでの経路
商流とは、エンドユーザー企業の発注が、実際に手を動かすエンジニアへ届くまでに経由する会社の連なりを指す。エンド直、元請け(1次請け)、2次請け、3次請け。階層がひとつ深くなるたびに、間に立つ会社が管理費や営業費の名目でマージンを取る。単純な構造である。そして単純であるがゆえに、個人の努力だけでは覆しにくい。
エンド企業が月90万円を支払う案件を例に、金の流れを表にした。金額は一例だが、構造は業界共通である。
| 階層 | 立場の例 | 動く金額の目安 | 担う機能 |
|---|---|---|---|
| エンド企業 | 事業会社・官公庁 | 支払い90万円 | 予算決定・要件定義 |
| 元請け(1次請け) | 大手SIer | 受取90万円→再委託75万円前後 | 受注責任・全体PM・品質担保 |
| 2次請け | 中堅SIer・SES企業 | 受取75万円→再委託60〜65万円前後 | 人材調達・チーム組成 |
| 3次請け(所属会社) | 中小SES企業 | 受取60〜65万円→給与等へ | 雇用・営業・労務管理 |
| エンジニア | あなた | 月給35〜40万円前後(還元率による) | 実作業のほぼすべて |
複数の業界メディアやSES企業が公開している解説によれば、エンジニアへの単価還元率は業界平均でおおむね60%前後。1次請けが取るマージンは15〜25%程度に収まることが多い一方、2次・3次と商流が深くなると、中間で消える割合の合計が30〜50%に達する例も報告されている。エンドが90万円を払っても、3次請けの会社に届く頃には60万円前後。ここからさらに雇用コストが引かれる。あなたの給与明細は、この長い引き算の最後の行なのである。
なぜ多重下請けはなくならないのか
ここで公平を期しておきたい。中間の会社がすべて「中抜き」の悪役なのではない。元請けは受注責任を負う。納期遅延や品質問題が起きたとき、エンドに対して矢面に立つのは元請けである。大規模案件で数十人の体制を短期間に組成する調達力、与信、契約実務。これらは実在する機能であり、機能には対価が支払われる。ここまでは健全な分業だ。
問題は、機能なき中間である。エンジニアの経歴書を右から左へ流し、面談を設定し、あとは毎月の伝票を通すだけ。それで単価の1〜2割を恒常的に取り続ける会社が、この業界には確かに存在する。エンジニアの側から見れば、自分の労働の対価がどこで、何の対価として削られているのか、まったく見えない。この不透明さこそが多重下請け構造の本質的な問題であり、だからこそ、次に述べる「確認」が意味を持つ。
エンド直・元請け・2次請け以下を見分ける
用語を整理しておく。エンド直とは、エンド企業と自社(または自分)が直接契約している状態。元請け(1次請け)とは、エンドから直接受注した会社の配下に自社が入る状態。2次請け以下は、その元請けとエンドの間に、さらに別の会社が挟まる状態を指す。
見分けるうえで重要なのは、常駐先の「看板」ではなく「契約書」である。常駐先がどれほど有名な大企業でも、あなたの所属会社が契約を交わしている相手がその大企業でなければ、商流は深い。逆に、地味な中堅企業のエンド直案件のほうが、条件面で優れていることは往々にしてある。顔ぶれの華やかさに惑わされてはいけない。
法律は商流をどう見ているか
二重派遣と偽装請負は違法である
雇用関係のない労働者をさらに別の会社へ送り込む行為は「労働者供給」にあたり、職業安定法44条で原則禁止されている。厚生労働省も「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」で線引きを示している。SES(準委任)契約の形式を取りながら、実態として商流上位や常駐先の社員から直接指揮命令を受けて働く、いわゆる偽装請負も違法状態である。判定の核心はひとつ。あなたに作業指示を出しているのは、契約上の雇用主か、それ以外か、である。
ついでに契約形態も押さえておこう。SESの実体は多くの場合、民法上の準委任契約である。準委任では、指揮命令権は受託した会社、つまりあなたの雇用主の側にある。常駐先の社員が日々の作業指示を直接出しているなら、それは契約の建て付けと実態が食い違っているということだ。一方、労働者派遣契約であれば派遣先の指揮命令は適法だが、派遣事業の許可が要る。自分の契約がどちらなのか、把握していないエンジニアは驚くほど多い。
2024年、2026年とルールは動いた
2024年11月には「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(フリーランス新法)が施行され、フリーランスへ発注する事業者には取引条件の書面等による明示が義務づけられた(政府広報オンライン)。さらに2026年1月には下請法が改正され、「中小受託取引適正化法」(取適法)として施行された。公正取引委員会の解説によれば、従来の資本金基準に従業員基準が追加されて保護対象が広がり、受託側からの価格協議の求めに応じない一方的な代金決定は明確に違反となった。多重下請けの「言い値」文化に、法が少しずつ輪郭を与え始めている。知らない者から順に損をする局面だ。
自分の商流を確認する質問例
商流は、聞かなければ教えてもらえない。しかし、聞けば案外わかるものでもある。案件面談や自社営業への確認で使える質問を挙げておく。
- 「この案件、うちは商流で何次に入りますか」——最も直接的で、最も有効な一問。即答できない、あるいは露骨に渋る場合、深い商流である可能性を疑ってよい。
- 「契約の相手方はエンド企業ですか、間に会社が入りますか」——注文書・契約書の発注元社名と常駐先が一致しているかで裏が取れる。
- 「作業指示は誰から受けますか」——契約相手以外からの指揮命令が前提になっているなら、偽装請負リスクの確認になる。
- 「エンドの担当者と直接会話する機会はありますか」——打ち合わせにすら同席できない距離感なら、階層は深い。
- 「単価はいくらで、還元の考え方はどうなっていますか」——単価を開示する会社のほうが、開示しない会社より検証可能である分だけ信頼しやすい。
商流改善の現実的な手段
1. いまの会社の中で商流の浅い案件を希望する
同じSES企業でも、案件ごとに商流は異なる。次の案件はエンド直か元請け直を希望する、と明確に言語化して伝える。それだけで変わることがある。営業は、言語化された希望には案外弱いのだ。
2. エンド直・元請け直比率の高い会社へ移る
採用ページや面接で「エンド直・元請け直の案件比率」「単価と還元率の開示有無」を確認する。近年は還元率や単価を公開するSES企業も増えてきた。開示それ自体は誠実さの証明ではない。だが少なくとも、隠す会社よりは検証ができる。
3. フリーランスとして商流の上流に立つ
エージェント経由のフリーランスは、多くの場合、エンドまたは元請けとの間に1社を挟むだけの浅い商流になる。冒頭に示したとおり、単価水準も総じて高い。ただし、雇用の安定、社会保険、案件が途切れるリスクを、すべて自分で引き受けることになる。単価の差はリスクの対価でもある。
断っておくが、商流を浅くすれば必ず収入が上がる、という話ではない。スキル、案件の需給、会社の還元方針。変数は多い。転職も独立も、最終的にはあなた自身の判断である。ただし、自分がいま何次請けの構造の中で働いているのかを知らないまま、その判断を下すべきではない。
営業の机の向こう側 —「商流は何次ですか」に答えられない構造的理由
先に「聞けば案外わかる」と書いた。だが実際に聞いてみると、返ってくるのは「ほぼ直です」「上位に1社入るだけです」といった、妙に輪郭のぼやけた答えであることが多い。営業が不誠実だから、と切り捨てるのは早い。仲介の机の向こう側から見ると、答えられないことには構造的な理由が三つある。
第一に、営業自身も正確には知らされていない。上位会社は自社より上の商流を開示する義務を負わず、案件情報は商流を一段下るたびに「大手SIer案件」程度の粒度まで丸められる。営業に見えているのは、自分のひとつ上までなのだ。
第二に、答えれば中抜き額が逆算される。何次かを明かし、単価を明かせば、間で消えている金額はほぼ計算できてしまう。営業にとって商流の開示とは、自社と上位のマージンの開示とほとんど同義である。曖昧にする動機は、ここにある。
第三に、「エンド直」の定義そのものが会社によって恣意的だ。エンドから受注した大手SIerへの一次請け参画を「エンド直」と呼ぶ会社は珍しくない。嘘とまでは言い切れない。だが、あなたが思い浮かべる「エンド直」とは別物である。「ほぼ直」の「ほぼ」に、1社どころか2社が畳まれていることもある。
だから、口頭の定型句を追い詰めても得るものは少ない。見るべきは書面である。契約形態(準委任か派遣か)、注文書の発注元社名、そして支払サイト。商流が深いほど上位からの入金を待って支払う構造になりやすく、サイトは長くなる傾向がある。営業の言葉ではなく、契約書と支払条件から商流を推定する。それが、答えの返ってこない場面での、最も現実的な自衛である。
まとめ — まず自分の位置を知ることから
商流は、エンジニアの単価を静かに、しかし確実に規定している。エンドが払う90万円と、あなたの手取りの間に何社あるのか。それを知ることが、単価交渉の、そしてキャリア選択の出発点である。幸い、法律は受注側に有利な方向へ動いた。フリーランス新法があり、取適法がある。あとは、聞くかどうかだ。
自分の商流がわからない、確認の切り出し方に迷う——そんなときのために、案件やキャリアの無料相談を本サイトの相談窓口で受け付けている。現役の仲介事業者として、内側から見える範囲のことを率直にお答えする。
FAQ よくある質問
SESの商流とは何ですか?
エンド企業の発注が実際に働くエンジニアへ届くまでに経由する会社の連なりのことです。エンド直、元請け(1次請け)、2次請け、3次請けと階層が深くなるほど中間マージンが積み重なり、同じ案件でもエンジニア側に渡る金額は減る傾向があります。
自分が何次請けなのか確認する方法はありますか?
自社の営業や案件面談で「この案件は商流で何次ですか」「契約の相手方はエンド企業ですか」と直接聞くのが確実です。あわせて、契約書や注文書に記載された発注元の社名と常駐先企業が一致しているかを確認すると裏が取れます。
商流が浅くなると単価はどのくらい変わりますか?
業界メディア等の公開情報では、1次請けのマージンは15〜25%程度、2次・3次を経由すると中間で合計30〜50%が差し引かれる例も報告されています。ただしスキルや案件の需給、会社の還元方針にも左右されるため、商流を浅くすれば必ず収入が上がるとは限りません。
二重派遣や偽装請負かどうかはどう見分ければいいですか?
判断の核心は指揮命令です。契約上の雇用主以外の会社の社員から日常的に作業指示を受けている場合、偽装請負や、職業安定法44条が禁じる労働者供給(二重派遣)に該当している可能性があります。厚生労働省のガイドが線引きを示しており、疑わしい場合は労働局などに相談できます。