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SESエンジニアの単価相場2026|スキル・工程別の実勢と給与の構造
2026年のSESエンジニア単価相場をレバテック・フリーランススタート等の公開データで整理。経験年数・工程別の実勢と、還元率50〜60%・精算幅・商流の中抜きという給与に反映されない構造を、SES仲介の現役事業者が解説する。
まず数字を見てほしい。エン株式会社が運営する案件情報サイト「フリーランススタート」の公開データによれば、2026年4月度のフリーランスエンジニアの月額平均単価は77.2万円である。単純に12倍すれば926万円だ。一方で、SES企業に所属する正社員エンジニアの年収は、その半分前後にとどまるケースが珍しくない。この落差は、能力の差ではない。構造の差である。
先に立場を明らかにしておく。本サイト運営者はSES仲介の現役事業者である。単価がどこで決まり、どの階層でいくら削られ、最終的にいくらがエンジニアの口座に着地するのか。その全工程を日常業務として見ている。だからこそ書けることがある。本稿では、2026年の実勢単価を公開データで押さえたうえで、給与に反映されない三つの構造——還元率、商流、精算幅——を当事者の視点から解き明かす。
2026年の実勢単価 — 公開データが示す水準
感覚論は排する。公開されているデータから始めよう。レバテックフリーランスが公開する単価相場データによれば、2026年時点の職種別・言語別の平均月額単価は次の通りである。
| 区分 | 職種・言語 | 平均月額単価 |
|---|---|---|
| 職種 | ITコンサルタント | 103万円 |
| 職種 | ITアーキテクト | 90万円 |
| 職種 | PM(プロジェクトマネージャー) | 88万円 |
| 職種 | フロントエンドエンジニア | 73万円 |
| 職種 | SE(システムエンジニア) | 72万円 |
| 言語 | Go | 83万円 |
| 言語 | Ruby | 81万円 |
| 言語 | Python | 77万円 |
| 言語 | PHP | 71万円 |
| 言語 | Java | 68万円 |
フリーランススタートの月次レポートも見ておく。2026年3月度の月額平均単価は78.0万円、4月度は77.2万円。掲載案件数は42万件を超え、リモート案件の比率は32.7%。常駐案件の平均77.1万円に対しリモート案件は77.6万円と、もはや出社の有無で単価はほとんど動かない。市場は70万円台後半で高止まりしている、というのが2026年前半の実勢である。
もうひとつ、見逃せない調査がある。ファインディ株式会社の2026年の調査によれば、コード生成に生成AIを活用しているエンジニアの平均月単価は、そうでないエンジニアより約10万円高い。年間で120万円の差だ。AIを道具として使いこなせるかどうかが、すでに単価の分水嶺になっている。
経験年数別・工程別で単価はこう動く
単価を決める軸は大きく二つ。経験年数と、担当工程である。
経験年数について、レバテックが運営する企業向けメディアの解説では、SESのシステムエンジニアに対する発注単価は初級(経験3〜5年)で月80〜100万円、中級(5〜10年)で100〜120万円、上級(10年以上)で120〜200万円というレンジが示されている。一方、業界全体の一般的なレンジとしては、テスターや実務1〜3年の初級層で月40〜60万円、中堅の開発エンジニアで60〜90万円、上流工程やPMOで100万円超という水準が複数の業界メディアで共通して語られる。前者は発注側が支払う金額、後者は市場の平均的な感覚値と読むのが正確だ。
工程については、序列がはっきりしている。テスト、実装、詳細設計、基本設計、要件定義。この順に、上流へ行くほど単価は上がる。同じ現場に座っていても、テスト仕様書を消化する人間と要件を定義する人間では、発注側が払う金額が倍近く違うことがある。単価を上げたければ、言語の習熟だけでなく担当工程を一段上げること。これは業界の鉄則である。
給与に反映されない構造 — 三つの関門
ここからが本題だ。上に並べた数字は、あくまで「発注側が払う金額」である。SES正社員の給与明細に届くまでに、単価は三つの関門を通る。
関門1: 還元率50〜60%という業界慣行
還元率とは、所属会社が受け取る単価のうちエンジニアの給与原資に回る割合を指す。業界メディア各社の解説はほぼ一致していて、一般的なSES企業の還元率は50〜60%。マージン率(会社の取り分)の平均は35〜40%程度とされる。単価70万円で還元率50%なら、給与原資は月35万円。ここから社会保険料の会社負担分や諸経費を差し引く会社もあるから、額面はさらに下がる。
近年は還元率70〜80%を掲げる「高還元SES」も増えた。ただし事業者として一言添えるなら、還元率の「分母」の定義は会社ごとに違う。交通費、社会保険料、教育費を含むのか含まないのか。計算式を確認せずに率の高さだけで飛びつくのは危うい。
関門2: 商流の深さ — 中抜きは静かに積み上がる
エンド企業が月100万円を払っても、その案件が元請けSIer、二次請け、三次請けと流れるうちに、各階層が10〜15%前後を抜いていく。あなたの所属会社に届く頃には70万円台、ということが普通に起きる。そこからさらに還元率がかかるのだ。商流が一段深いだけで、同じ仕事をしていても手取りは数万円単位で変わる。エンジニア本人が自分の商流の深さを知らされていないケースが大半である、という事実も付け加えておく。
関門3: 精算幅 — 契約書の中の見えない変数
SES契約には精算幅という仕組みがある。月140〜180時間が一般的な設定で、下限を割れば控除、上限を超えれば超過精算が発生する。計算方式には上下割と中間割があり、超過時の時間単価は安く、控除時の単価は高く設定されがちだ。つまり働き過ぎても増えにくく、稼働が減ると引かれやすい、非対称な設計である。
そして正社員SESの場合、この超過精算金は会社に入る。固定給+みなし残業の給与体系なら、あなたが月180時間working働いても、増えた精算金があなたに還元される保証はどこにもない。単価と給与が連動しない構造の、これが核心部分である。
| 受注単価(月) | 還元率50% | 還元率60% | 還元率70% |
|---|---|---|---|
| 60万円 | 30万円 | 36万円 | 42万円 |
| 70万円 | 35万円 | 42万円 | 49万円 |
| 80万円 | 40万円 | 48万円 | 56万円 |
同じ単価でも、還元率が10ポイント違えば月収は7〜8万円、年収なら100万円近く変わる。転職先を選ぶとき、求人票の額面より先にこの構造を見るべき理由がここにある。
法制度は変わりつつある — ただし正社員は対象外
2024年11月1日、フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行された。発注事業者には業務内容・報酬額・支払期日の明示義務が課され、2026年1月には取適法(改正下請法)も施行されて価格交渉と支払条件のルールはさらに厳格化された。フリーランスにとっては明確な追い風である。
だが冷静に見てほしい。これらはあくまで事業者間取引の法律だ。SES正社員に対して、会社が単価を開示する法的義務はない。労働者派遣契約であれば派遣法によるマージン率等の情報提供義務があるが、SESの主流である準委任契約はその対象外である。開示は義務ではなく、会社の姿勢の問題。だからこそ、単価公開や単価連動給与を制度として掲げる会社かどうかが、SES企業を見極める最も実用的な指標になる。
営業の机の向こう側 — 単価を聞かれた営業に起きていること
「自分の単価はいくらですか」。エンジニアがこう聞いた瞬間、営業の机の上では何が起きているか。仲介の現場から、その内側を構造として書いておく。まず知ってほしいのは、答えない営業の全員が隠しているわけではない、という事実だ。商流が三次、四次と深い案件では、営業自身が上位の契約金額を知らされていないことがある。営業が把握しているのは自社が受け取る金額まで。エンドが払う本当の単価は、営業にとってもブラックボックスなのである。
一方、知っていて答えない場合の事情はこうだ。単価を開示すれば、あなたの給与と突き合わせて還元率が一瞬で逆算される。そこから始まるのは昇給交渉か、退職の算段か。どちらも会社にとってはコストだ。だから多くのSES企業では、単価の開示可否は営業個人の裁量ではなく、会社方針として先に決まっている。目の前の営業を問い詰めても動く話ではないのだ。
はぐらかしには型がある。「単価はお客様との契約情報なので」は守秘義務型。「評価に応じて給与で還元しています」はすり替え型。「単価より現場との相性が大事ですよ」は論点移動型。いずれも営業個人が悪人だからではない。開示ルールを持たない会社で摩擦を避けるための、定型句という名の防具である。責めるべきは個人ではなく制度だ。
では、どう聞くか。額そのものではなく、聞き方を変えることだ。「この案件はエンドから何次目ですか」「還元率の計算式はどうなっていますか」。額の開示は方針で縛られていても、商流の深さと計算式なら答えられる営業は多い。この二つが分かれば、単価の概算は自分で立てられる。そして、これにすら答えられるかどうかが、その会社の透明性を測る試金石になる。
今日からできる自衛策 — 5点チェックリスト
- 自分の単価を推定する。フリーランススタートやレバテックで、自分と同じスキル・経験年数の案件単価を検索する。それがあなたの市場価格の近似値だ。
- 還元率と計算式を確認する。評価面談で聞いてよい。答えない会社、という事実自体も重要な情報である。
- 商流の深さを聞く。自分がエンドから何次目なのか。二次以内が望ましい。
- 精算幅と超過分の扱いを確認する。超過精算金が給与に反映される制度かどうか。
- 生成AIとクラウドのスキルを積む。調査データが示す通り、月10万円の単価差はすでに現実である。
断っておくが、フリーランスになれば全部解決、という話ではない。エージェント手数料、社会保険の全額自己負担、案件の空白リスク。独立にも独立のコストがある。転職も独立も、最終的には読者自身の状況と判断に委ねられるべきものだ。ただ、判断の前提となる数字を知らされていない状態だけは、今日で終わりにしていい。構造を知る者から順に、交渉のテーブルにつける。それがこの業界の、変わらない現実である。
案件やキャリアの無料相談は本サイトの無料相談窓口へ。現役事業者の視点で、数字ベースの整理を手伝う。
FAQ よくある質問
SESエンジニアの単価相場は平均いくらですか?
フリーランススタート(エン株式会社)の公開データでは、2026年4月度のフリーランスエンジニア月額平均単価は77.2万円です。ただしこれは発注側が支払う金額であり、SES正社員の場合はここから商流の中抜きと還元率(一般に50〜60%)を経た額が給与原資になります。
自分の単価を会社に聞いたら教えてもらえますか?
準委任契約が主流のSESでは、会社に単価の開示義務はありません(派遣契約のマージン率等情報提供義務は対象外)。ただし単価公開や単価連動給与を制度化した高還元SESも増えており、評価面談で確認する価値はあります。回答を拒む姿勢自体も会社選びの判断材料になります。
還元率は何%以上なら高還元SESといえますか?
業界の一般的な還元率は50〜60%とされ、70%以上を掲げる企業が「高還元SES」と呼ばれることが多いです。ただし還元率の分母(交通費・社会保険料・教育費を含むか)の定義が会社ごとに異なるため、率の数字だけでなく計算式まで確認することが重要です。
フリーランスになれば単価はそのまま収入になりますか?
なりません。エージェント手数料、社会保険料の全額自己負担、税金、案件の空白期間リスクなどを差し引いて比較する必要があります。精算幅や支払サイトなど契約条件の確認も必須で、独立するかどうかは自身の生活状況とリスク許容度を踏まえた判断になります。